装飾音の弾き方(その1)
拍の頭の装飾音(譜例1)の弾き方にはいくつかあり、その代表例を譜例2〜4に挙げます。
 
それぞれの特徴を次に記します

 
 
 

              譜例1      譜例2             譜例3                     譜例4

■拍の頭で揃えて弾く方法(譜例2)

非常に正確な硬い感じを与えます。

本来の旋律であるC音がリズムからやや遅れて聞こえるところにエコー的な効果が期待できます。

本来の旋律が遅れることから装飾音は長めに取ることができず特に速いパッセージでは顕著です。

従ってリズムにあわせようということからやや窮屈な感じを受けます。
 
 

■旋律は拍の頭で合わせますが伴奏は装飾音から遅れて始める方法(譜例3)

装飾音を一拍目に正確にあわせているにもかかわらず先に出ている印象を与えます。

 
従ってやややわらかい感じとなりますが旋律側から見ると正確なので崩れません。
 
一方伴奏のリズムにずれが生じるためともすると全体的なリズムの乱れに注意を要します。

 

■装飾音を前小節の最後に先取りして弾く方法(譜例4)

 
非常にやわらかい感じを与え、表現の幅も広がります。
 
一方崩れた感じを与えるのでその部分だけの感覚だけで弾き方を決めてしまうのは危険です。
 
この崩れを旋律に入ってからうまく処理しないと全体的にまとまりのない演奏となってしまいます。
ショパンは多くの場合装飾音は一拍目に合わせるように生徒に指導しているという記録があります。
しかし譜例2で示すような形を強調すると、ともするとショパンの優雅で甘美な印象と合わない場合

があります。

そのため譜例3の弾き方を採る演奏家は少なくありません。

 
往年の巨匠には譜例4の例も多く見られます。