アップライトとグランドで大きく異なるのが、鍵盤の動く方向とハンマーの動く方向の同一性です。アップライトでは、鍵盤の上下運動を機械的に変換してハンマーの前後運動にしているのに対し、グランドでは鍵盤の上下運動がそのままハンマーの上下運動になっています。
さらにハンマーの戻るための力、あるいはダンパーの戻るための力が、グランドの場合は極めて自然に重力により実現されているのに対し、アップライトでは重力さえも機械的に変換されて伝えられたり、無理やりばねの力を使っている部分がある点が大きく異なります。
ここに、アップライトとグランドでエネルギーロスと言う観点でグランドの方が明らかに優れているということが言えるわけです。
機械系のエネルギーロスが大きいということは伝達関数の線形性を損なうこととなりますので正確な伝達を妨げる要素になります。
線形性を損なう=伝えたい表現が音になる仮定でゆがめられる、つまり演奏者の意図をより正確に伝える上の支障になるということです。換言すれば明らかに表現力という点で劣るということとなります。
さらに物理法則の最も基本である重力をそのまま自然に利用していることは、扱う上で非常に素直にコントロールできるばかりか、動きが自然が故の自然な感覚がそこには生まれると言えます。
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