電子ピアノでの練習の留意点

ただのスイッチの集まりであるキーボードから進化し、電子ピアノと呼ばれる始めの時代を風靡したのがコロンビアのエレピアンではなかったでしょうか。
音は電子音ではあるもののそれなりのタッチを楽しめるこの楽器は非常に興味深いものでした。

その後ヤマハを始め河合、テクニトーン、ビクトロン、コルグ等の楽器メーカがこぞって揃えた電子ピアノはタッチコントロール機能を具備し鍵盤に適度な重みを加えたものでいずれも電子楽器という観点ではびっくりさせたれるものでし
た。

さらに音源やタッチなどの改良が加えられ、最近の電子ピアノはどのメーカのものでも(電機メーカのものでも)かなり高水準のものが揃っていると言えます。

しかし電子ピアノには鍵盤の機械的なアクションが無いことから指に感じるピアノとの対話とでも言うべき感覚が無いことにより、どうしても無造作に音を出してしまうと言う難点があります。
本質的に音を聞くということができない、力を抜くことを覚え難い等、致命的な問題に多く直面しています。
アコースティックピアノの感覚を実感し補助的に使用するのであれば良いのですが、幼児教育に使用した場合、教える側に相当強い意志と良識がないと、どうしても電子ピアノで練習したという、それらしい癖がついてしまい、意識を持ってからそれを直すのには非常に苦労します。

その一方で最近の住宅事情からアコースティックピアノを、特に集合住宅に持ち込むことは多くの困難を克服しなくてはいけません。ましてグランドとなれば殊更です。
従って電子ピアノを使用することを否定していても仕方なく、それを使ってどのように練習してもらうかそのノウハウが重要になってくると言えます。

例え一週間に一度のレッスンでもそこに重点を置いて教えることにより、単に弾く事だけでなく、聴くこと、音楽に触れること、右脳を育てることを意識することにより改善が見られます。
また自宅での練習における注意点(音量の設定の仕方、ヘッドフォーンの使い方等)について的確に指示することも重要なポイントと考えます。
自分の音を聞く習慣、指先の神経と音の関係、無駄な力を入れないこと、などについては例え一週間に一回のグランドピアノのレッスンで意識を与えることにより技術を磨くことができると考えます。

                                                   2004.11