(1)フランス語の特徴 |
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フランス語を正確に子供に使えるというのは教育の指針となっている(誇りがあ る)。フランス語には明晰でない言葉はない、と言われるくらい論理的な言語であり、無駄な言葉は入れない、そして論理が伝わるようにできている、という特徴が ある |
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A |
パリのオペラ座を立てた建築家カルニエは、「フランス語とは一つ一つの単語という単位(レンガ)を組み合わせて建てた建築物のようである」と言っている。 |
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B |
ヨーロッパの建築は窓との戦いと言われる。レンガの建物で窓をつけると構造的に弱くなる。そこには力学的論理がいる。それがフランス語そのものである(フランス語の論理性の源)。 |
(2)理知的な批判精神 |
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フランス人は誰もが一人一人が理由を言う。演奏会の批評でも昨日の料理についてでも議論を行う。演奏会のどこが良かったかその感じ方が自分とどう違うかという議論になったり、夕食のワインの選定についての議論をしたり、そのようなことが会話となっている。一人一人が自分の考え持っていて批評できる、そういう文化がある。 |
(3)古典への敬愛 |
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フランスにとって古典とは18世紀のことである。18世紀はヨーロッパの光の時代。
この光とは、ヨーロッパの森を刈って牧草を植えたため実際光が当たったという背景と啓蒙主義→産業革命という技術文化の光という両面がある。
この光の時代(18世紀)に育った芸術に対し敬意を払っているのである。
教会旋法を多用するというのもその現れと見る見方もある。
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(4)視覚的身体表現の重視 |
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フランスではバレー音楽が多い。
バレーとは舞台上の身体的表現であり志向性が強い。
町行く人たちでも皆舞台に登場してもおかしくない身なりと風貌、様子がそこにはある。
日本人の会話は一見おとなしそうに見え実は平行線という形が多いが、フランス人の会話は議論になるため会話の初めと終わりでは異なった結論に至っている場合が多いのである。 |
(5)表現そのものの完璧志向 |
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音楽教育にはフランスを代表とするラテン系とドイツを代表とするゲルマン系がある。日本ではまずゲルマン系音楽教育がなされている。
ゲルマン系教育では例えば和声の課題に対し和声理論的に間違っていない解答をすればそれは合格となる。
しかしラテン系教育においてはこれは全く意味を持たないとの評価となる。つまり課題に対する最高の回答は唯一つあり、それにいかに近づくかということが価値を決める。出来上がりが良いか悪いかということそこに真実がある。
後にゲルマン系音楽が表現主義を、そしてラテン系音楽が印象主義となって行くのである。 |
(6)吸収性と革新性及びスペイン、アジア、ジャズなどへの志向性 |
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フランスには人種の問題がある。
実際パリにはアフリカ、アジア、他多数の人種が存在するものの人種同士のいがみ合いはない。
人種を全て受け入れ、その受け入れた全てがフランスなのである。
ラベルの音楽にアジア系旋律が出てきてもそれを含めてラベルの音楽となるのは、このようなパリの芸術、フランスの概念への統一性ということに源があると言えるのである。 |
(7)象徴詩への傾倒 |
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詩人への傾倒。
⇒(博物詩のような作品は顕著であるが、鏡を代表とする表題音楽、またガスパールではベルトランの詩集からの引用がある
博物詩(Jルナール)は自然の虫などを台際とした散文詩である。
(例「へび」:一言だけ、長すぎる)
ラベルはこれを歌曲にした。
孔雀の例では、散文詩では数行からなるものであるが、ラベルの音楽では1/4ページで終わっている。
これくらい簡潔なのである。
このことはフランス語の完全性論理性につながるものと言える。 |
(8)怪奇性やメルヘン性 |
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⇒絞首台、やマメールロワ等が象徴的であろう |
(9)課題性 |
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あらゆる作品に対し課題性あり。ボレロや左手の協奏曲は明確にそれが見える。分析してみると和声や形式等への拘り規則性(=課題性)を感じるものが極めて多い。
⇒(1)〜(9)このような背景を理解するとラベルの音楽がまた一つ深く味わえるのである。いずれも極めて興味深く拝聴した。
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